虫垂憩室穿孔による汎発性腹膜炎の1例

Abstract

72女性、突然の腹痛を認め救急外来を受診した。下腹部中心に圧痛と反跳痛を認めた。採血上、白血球やCRPの上 昇は認めなかった。腹部CT上、腹部全体の脂肪識の濃度上昇と下腹部中心に腹水貯留を認めた。右下腹部周囲に多 くの液体貯留を認め、典型的な臨床経過ではないが、急性虫垂炎穿孔による腹膜炎を疑い、試験腹腔鏡手術を施行し た。腹部全体に膿性腹水を認めた。虫垂間膜側に小穿孔部位を認め虫垂穿孔による腹膜炎と診断し、虫垂切除術を施 行した。切除虫垂の壁肥厚を認めるが、病理所見上、虫垂粘膜の炎症所見はなく、穿孔部位に虫垂憩室を認め、憩室 局所の炎症を伴っていた。虫垂憩室は急性虫垂炎と比較して穿孔率が高く、局所炎症でも穿孔し突然の腹痛で発症す ることがある。採血上、炎症所見を伴っていない場合でも、腹部症状や画像所見から虫垂憩室穿孔による腹膜炎を念 頭におくことが肝要と考える。 今回我々は虫垂憩室穿孔による汎発性腹膜炎の1例を経験したので、文献的考察を含め報告する。